丸森との出会い

2008.05.02

2004年10月、一関で「いのち蘇る布細工展」が行われました。この展示会は前沢の森田珪先生が主催される「女わざの会」によるもので、衣食に関する昔からこの地方で伝承されてきた家の中の技術を掘り起こし伝える貴重な活動を続けていらっしゃいます。この展示会では共同制作によるタペストリー、会員の制作した大きな座布団、風呂敷、古布など丁寧な仕事が数多く展示され、またおいしい郷土料理までご馳走になるという心も体も満たされる展示会でした。

その展示会で私は丸森の田所キクノ先生と出会ったのでした。先生は当時87歳で、すでに足を悪くされていたにもかかわらず、「自分の持っている技術をすべて次ぎの世代に伝えたい」と丸森から一関まで出てこられたのでした。その熱い思いにと
ても感動し、私はまさにそれを教えていただきたいのだと、その場で弟子になりました。

田所先生ちょうどその月で仕事をやめることになっていた私は、これは天の采配だと思いました。以前から糸つくりに興味があり、繭から織りまで一連の仕事を身につけたいと願っていた私には本当にありがたい出会いでした。

11月から片道1時間半の丸森通いが始まりました.。機場に行くといつももう先生は、寒いのに待っていらっしゃいました。その並々ならぬ熱意と暖かなお人柄に、ただただ頭の下がる思いです。しかし寒さや先生の体調や記憶の悪化など困難なことも多く、1を聞いて10を分かるようになろうと必死で習いました。
先生から機を譲り受けたとき、私は機と一緒に先生の思いをいただいたのだと、その技術と思いを受け継ぐために努力し、さらに次に伝えることが私の役目なのだと思いました。

そうして丸森に通ううちに、耕野の「身しごと会」や丸森の「高齢者センター織物部会」、「大内地織り会館」の方々との出会いもあり、大きく世界が広がりました。今はその方々とともに糸つくりを勉強しています。

丸森は古くから織物文化の根付いた地域でした。その歴史と織りについて、また現在かかえている養蚕の問題について、少しでも御伝えできればと思います。